「ほっ」と。キャンペーン

砂の中から金

去年の夏は立て続けに色々あった。

先ず暴漢に襲われ、押し売りのようなフランス商法にまんまと騙され、
マルシェのオヤジにはバカ扱いされ、踏んだり蹴ったりであった。

疲れてた。

そんな哀れな私に、またもや事件が。
イギリスから持ってきていた洗濯機兼乾燥機が壊れた。
イギリスのメーカーだったので、修理が出来ない。
仕方なく新しいのを購入する事にした。

壊れたのが月曜日。
火曜日に購入し、配達されるのが木曜日だと言う。

「洗い」の途中で止まった洗濯機。
ビショビショ状態の洗濯物を2日も3日も放置しておく事も出来ないので、
水曜日、近くのコイン・ランドリーに持ってくことにした。

重たい、濡れた洗濯物を籠に入れてたので、できるだけ近いところに車を停めたかった。
左に曲がったすぐのところが空いていた。
でも、ちょっとバックしなくちゃいけない。
後ろから来ていない事を確認して、アクセルを踏んだ。

グシャッ!っと音がした。
な、何?何の音?
何もない筈なのに、なんでこんな音が、、、。

間が悪いとはこういうことを言うんだろう。
斜め直ぐ後ろに、小型車が来ていた。
見たはずなのに、見えなかった。

ギョッとして出て行くと、後ろの車からも、あきれ果てたマダムが。
私の後ろのバンパーは、べっこり。
彼女の前のバンパーは2ミリくらいの深さで2センチほどの引っかきキズと
ボンネットにかすり傷。
私の車に比べたら、大した事ないといったら大した事ない。
自分でつけたなら、無視できるくらいのもの。
でもね。人からやられたら、また別の話。

誤っちゃいけないって言うけど、どう考えたって私の不注意。
すぐ低姿勢で誤った。

マダムは自分の車のキズを見ながら、「大した事ないわね」と。
って、ことは見逃してくれるってこと。
そういうことも、ままあると聞いている。

「メルシー、マダム」と、ホッとしたのも束の間。
それじゃぁ、と事故申請の用紙を取り出した。

そ、そうよね。そんな甘い話はないわよね。
諦めて、マダムの後に用紙に記入。

「これから後は、保険屋さんとの遣り取りになりますから。」とマダム。

でも、私は出来るだけ保険を使いたくなかったので、値段によっては直接払いたいからと
見積もりをお願いする。

じゃ、直ぐそこにガレージがあるからと、マダムの車で行く事になった。
ワーゲンのガレージなのに、ルノーの車を持ち込んでいいのかしら、と思ったら、
よくあることらしく、ムシュー達は快く迎えてくれた。

「あんたがやったの?」と聞かれ、肩を落として頷く私。
私の不注意で、と神妙にしていたら、同情した兄さん達は、ボンネットのキズを
オイルで落としてくれた。
その上、バンパーのキズだって大した事ないじゃないか、とマダムを説得し始める。

考えるマダム。

実は、ここに来る前、車の中でちょっと愚痴った私。

「悪い事って重なるんですね。洗濯機が壊れて、買う羽目になって、
 その上事故を起こすなんて。と言っても私の不注意なんですけど、、。はぁ~。」

すると、マダム。

「いいわ。ただって訳には行かないけど、50ユーロでチャラって言うのはどうかしら?」

私の愚痴に同情してくれたかどうかは分からない。
でも、ありがたい申し出。
もし、バンパーを直すとしたら150ユーロだって足りないだろう。
50なんて恩の字である。

50ユーロ支払い、一筆書いていただき、メルシーマダムと別れを告げた。

さて、後は自分の車。
運転すると、シャリシャリ音がなる。
バンパーが凹んで、タイヤに当たっている。
途中、パンクしなけりゃいいな、と思いながら、近くの修理やさんへ。

バンパーを取り替えるつもりはなかったので、凹んだ部分を叩いて直して欲しいと
お願いしてみる。
お安いご用さ,と兄さんふたり。

「、、、と言う事で、一件落着です。」と、やっと夫に連絡を入れた。
大事に至らなくて良かったと言った彼から質問が。
「ところで、その修理代いくら?」
オットいけない。肝心な事を聞くの忘れてた。

「ムシュームシュー。おいくらですか?」
そしたらムシュー。
「こんなの、タダでいいよー。」って。

うっそでしょー!タダだなんて。
マダムも優しかったが、ここでもこんな優しくされるなんて。
なんて、ラッキーなんだろう。

いろいろあって、疲れきっていた私には涙ぐむほど嬉しかった。
その足で大きなチョコレートの箱を買い、お礼に渡した。
嬉しそうな兄さんたちの顔、ずっと忘れない。

ありがとう。

後日、フランス生活6年の友人にその話をしたら、彼女から一言。

「あら、あなた。そんな良い人たちに出会うなんて、砂の中から金を探すようよ。」

ほんと、そうかもしれない。
でも、金はあったんだ。
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by suzume-no-oyado | 2006-07-19 23:50 | 暮らし | Comments(4)
Commented by ポポ手 at 2006-07-21 19:31 x
粋な話ですよね。お宿さんの描写がまた巧みなもんだから、まるで映画の一場面をみるように、ありありと絵が浮かんできます。融通がきくというか、こういうことは日本ではないと思う。砂の中の金は、きっとお宿さんが呼び寄せたんだと思う。
Commented by suzume-no-oyado at 2006-07-21 20:36
>ポポ手さん
浄化作用というか、あれだけ嫌な事があったのに、この日で洗い落とされたみたいでした。あれから1年。そろそろ貯まってきた頃なので、また金に出会うといいんですが、、。
Commented by むつこ at 2006-07-22 22:49 x
それがですね、お宿さんとポポ手さん、読んで、私びっくりしたんです。うちで長く車に乗っていないことがあって、バッテリーがあがってしまったんですね。(色々省略)最後にたどりついた小さなタイヤ屋さんがうちまで車で来てくれてわざわざ充電してくれたんです。それもタダで。私もお菓子持っていきました。シュークリームとケーキ。
・・・私もまたこんな日も来るさ、と思うことにします!
Commented by suzume-no-oyado at 2006-07-23 02:46
>むつこさん
1回の嬉しい出来事で、その前の9回の嫌な事を忘れてしまいますよね。
人間ってうまく出来てるものだなーって思います。
お互いポッと沸いたような楽しい出来事があるといいですね。
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