魔の刻

私達家族は、全員お茶好き。
それもミルクティー。

イギリス人の中でも、ブラックを好む人もいるが、断然ミルクをいれて飲む人の方が多い。
でも、イギリスは水が硬質のせいか、お茶をストレートで入れても香りが
思ったようにでない。
日本の水っていいんだなぁ、と実感。
それに、すっごくいいお茶は別として、普段飲まれてるレベルのお茶は、
なんか味が無い。
でも、そのお茶を真っ黒いくらいに入れて、ミルクをたっぷり入れると、
とってもコクのある美味しいお茶に変身。
この飲み方を日本でしたら、お茶に渋みが出てしまい、今一つ。
やっぱりその土地にあったのみ方があるんだね。

ある朝、そのお茶に欠かせないミルクを切らした。
むすめ2人に買ってきてと頼んだが、次女だけしかOKしてくれない。
確か、2人とも小学生だったが、子供一人で出かけさせることは無かった。
いくら田舎で治安はそう悪くは無いといえども、車にヒョイっと連れ込まれるって事も
十分ありえる。

でも、直ぐソコだし。
本人も自転車で行くから一人でも大丈夫って言うんで、ついお願いした。

帰ってこない。
いくらなんでも遅い。
心配して外に出てみると、うちの前に住んでいるおばあさんと一緒に
歩いて来るのが見えた。
よかった~。
でも、あれ?なんかオカシイ。
怪我してる。それに、自転車の前輪がへし折れてる。

車に撥ねられた。
郵便局の裏の駐車場から出てきた車とかち合ってしまった。
彼女は歩道を走ってて、でてきた車にぶつかり、自転車の前輪が車に巻き込まれた。
ポーンと宙に投げ飛ばされ、ボンネットに落ちてから、車道に転がったという。
もし、ソコに車が通ったら、なんて考えて、ゾッとした。

頭は打たなかった。
ドクター曰く、落ち方がよかったんでしょう、と。
器械体操の選手だから、落ちた時の受身が出来てたんじゃないですか、と言われた。
とにかく、あれだけの事故で、膝の筋を違えただけで大事には至らなかった。
よかった、よかった。

運転していた女性の方も、かなりショックだったらしく、何度も何度も様態を聞いてきた。
きちんと誤ってくれたし。

救急車を呼ぼうとしたらしい。
そうしたら、次女は「救急車~?!」とビックリして、急にシャンとなった。
「大丈夫です。歩けます。」と、女性に告げ、気丈にも一人で家に帰ろうとした。
ソコにたまたま居合わせた、うちの前に住んでいるおじいさん。
「私は、この子のうちを知ってるから、送っていく。」と申し出てくれた。
でも、次女。おばあさんのほうは知っているけど、おじいさんのほうは知らない。
知らない人とは話しちゃいけない。しかも、車に乗るなんて絶対ダメダメ、
と彼女は思った。
その、申し出もかたくなに断る。
でも、周りの大人はまさか怪我をしている彼女を一人で返す訳には行かない。
で、おじいさんはおばあさんに連絡をして、連れて帰ってくれたって訳。
「ありがとうございます。」とお礼を述べた。
でも、迎えに行く時に私に連絡してくれたって、いいんじゃない?

後日、その話を次女の担任に話したら、それが校長先生にまで行き、彼女は表彰された。
校長賞、と言う、なんだか訳のわからないものをいただく。
理由は、非常時に於いても、ストレンジャーの車に乗らなかった彼女の堅実さ、だという。

暫くは、ちょっとした有名人だったらしい。
本人も、長いこと胸に校長賞のシールを貼っていたっけ。
プラウドだったんだね。

でも、あの時、本当に頭を打たなかったんだろうか?
そんな事がフ、と頭をよぎる、今日この頃である。
by suzume-no-oyado | 2006-05-28 19:43
<< トロピカルハウス ピーナッツアレルギー >>