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大根役者

今回の一時帰国には、もうひとつ目的があった。
娘達を広島の原爆資料館に連れて行くこと。

夫の実家が四国なので、松山からスーパージェットと呼ばれる水中翼船で1時間。
「晴れてれば、瀬戸内海の島々がきれいよ~。」と言われ、楽しみにしてたのに。
5分で熟睡。
おりしも台風7号接近中で、船はいい感じで揺れていた。
酔わなきゃいいな、なんて心配は無用。

広島港から市電で原爆ドームへ。
東京に比べて西日本は暑いとは知ってはいたが、とにかく暑い。
大阪の暑さとは、また別格である。

ジリジリジリ。

「こんな暑い日だったのよ。原爆が落ちたのは。」

見せたかった。娘達に。
私は10歳の時に、長崎の原爆資料館に行った。
その時の衝撃は今でも忘れない。

誰が悪い、どっちが悪い、と言う問題ではない。
「使ってはいけないもの」と、子供心に思った。

彼女達も、もちろん原爆の事は勉強した。
アメリカサイドから受ける印象と、必ずしも同じではない筈。

ドームから資料館まで10分はかからないのに、炎天下の中、
どうも熱中症にかかったよう。
倒れそうだった。

すごい人ごみの中、娘達には英語のガイドを渡し、別行動。
ひとつひとつ真剣に聞いてくれるのかな、の心配をよそに、けっこうちゃんと回ってる。
感心、感心。

音響と展示で、半分タイムスリップしたようで、空気が重たい。

相変わらず気分の悪い私は、途中休みながらも、とんでもない人ごみは避けたので、
彼女達を外で待つ事になった。

出てきた。

と、開口一番、「このガイド最低。あんまりだよ。」と。

アメリカンアクセントの外人がナレーションをしていた。
普通に話しているところは、問題ないと言う。
幾つかの場面が詩や物語の朗読になっていた。
しかも、とっても悲しい場面なのは分かる。
が。
このナレーター、恐ろしいほどの大根役者。

「ぁぁ~、ぉかあさん。」と言う、か細い悲しそうな台詞が、彼女にかかると、
「おあぁあぁ~!おかあさん!」と、ムンクの叫びのように大げさになる。

声で聞かせられないのが残念。

笑っちゃいけない、と分かってはいたと。
周りの人たちも、悲痛な顔をしてるし。

出口近くの最後の朗読で、我慢の限界が来た彼女ら。
プーッと噴出し、転げまわるように笑ってしまった。

ヒンシュクを買ったのは、言うまでもない。
でも、責めないであげて。
悪いのは、その大根役者なんです。

しかし。

一体、私たちの目的は達したのだろうか??
by suzume-no-oyado | 2006-09-01 17:35 | 日本
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